
WP から始まる WordPress プラグイン名
目次
背景: WordPress プラグインを作った x 2
1つ目: WP RAG
以前、WP RAG という WordPress plugin を作って公開したという話をした。公開と言っても、GitHub 上で公開したりウェブサイトを作っただけで、WordPress.org のプラグインディレクトリに登録したわけではなかった。
WP RAG – Build RAG Systems with WordPress Content
WP RAG は、技術的な知識がなくても簡単に RAG 技術を使ったチャットボットを構築できるのが特徴だけど、その反面、弊社が管理する API サーバーに投稿のコピーや埋め込みデータを保管する必要がある。そのため、セキュリティポリシー等のために自社サーバーで運用したいが可能か、というお問い合わせを何件か頂いた。
2つ目: WP RAG for Amazon Bedrock として開発を開始
それを解消するために、ベクトルデータベース、LLM 等を弊社で管理するのではなく、お客様が管理する AWS アカウント内の Amazon Bedrock を使用するバージョンを開発した。そのプラグインの構成等は本題では無いので、興味のある方は以下のページを参照して欲しい。
WP〜 という名前が原因で、門前払い
本題だが、そのプラグインを当初は「WP RAG for Amazon Bedrock」と名付けた。また、今回は、WP RAG の時に出来なかった WordPress.org のプラグインディレクトリへの登録を目指してコードの修正を行った。そして、いざ登録申請のためにプラグインをアップロードすると
「WP から始まるプラグイン名は許可されない」
というようなメッセージが出て、門前払いとなった。
仕方ないので、Claude Code でささっとプラグイン名、クラス名等々を直して再申請した。
本題: WP ○○○ はいつから禁止されているのか
さて、WordPress を自分で運用した事がある人であれば
「名前が WP から始まるプラグインなんていっぱいあるけど」
と思ったはず。私もそう思った。多分、昔は許可されていたんだろうと思って、今回経緯を調べてみた。
そもそも WP ○○○ 禁止の根拠は?
プラグインガイドラインの17章には以下の記述がある。
The use of trademarks or other projects as the sole or initial term of a plugin slug is prohibited
(snip)
For example, the WordPress Foundation has trademarked the term “WordPress” and it is a violation to use “wordpress” in a domain name. This policy extends to plugin slugs, and we will not permit a slug to begin with another product’s term.
wporg-plugin-guidelines/guideline-17.md at trunk · WordPress/wporg-plugin-guidelines
ここには WordPress はダメと書いてあるけど、WP がダメとは書いていない。WordPress は the WordPress Foundation の商標だけど、WP はそうではない。なので、なぜ WP で始まるプラグイン名がダメなのかはこれだけだと不明。
WP -> WordPress に後から変更されるのを防ぐために2021年に導入された
生成 AI に聞いたり検索したりしたら、以下のページが見つかった。このページに詳しい経緯が書いてあった。
要点だけ超訳すると
- 2021年8月にあるユーザーが Twitter (現X)に WP で始まるプラグイン名が拒否された事を書き、コミュニティで騒動になる
- その制限が追加されたのは2021年1月だが、何の周知もなかった
- 騒動の後で、WordPress Plugin Team の人が、意図を説明
- 「WP〜」というプラグイン名を、商標侵害と知らずに後から「WordPress 〜」に変更してしまう事を防ぐため
- これは実験(experiment)
- WP は the WordPress Foundation の商標でもないし、商標登録も目指さない
- この措置は、現時点では過去には遡及されない(WP〜で審査を通っているものはそのまま)

それに対する意見
さっきのページの著者やコメント欄をざっと見る限り、肯定的な意見はほとんど見られない。主な批判は
- WP -> WordPress 変更を防ぎたいなら、もっと違う方法で出来るはず
- こんな重要な変更を非公開の場で決めるな
ってところ。
個人的な意見
アップデート時にも商標チェックすれば良いのでは?
ソフトウエア開発者なら誰でも思うはずだけど、最初の審査時だけでなくアップデート時にも商標チェックすれば良いだけじゃないの、これ。
この「実験」は、2025年10月現在でも有効になっている。
WP Engine 問題
この問題を調べてたら、the WordPress Foundation のページで以下の記述を見つけた。
Please do not use “WP” in any way that confuses people. For example, many people think WP Engine is “WordPress Engine” and officially associated with WordPress, which it’s not. (They have not donated to the WordPress Foundation, despite making billions of revenue on top of WordPress!) Just because you’re using “WP” doesn’t mean you aren’t violating trademark law in other ways—if you look in Internet Archive for dozens of things WP Engine has changed on their site around their use of the WordPress (and WooCommerce) trademark you can get a good sense for what not to do.
Trademark Policy – WordPress Foundation
商標登録されていない「WP」を使った WP Engine で何が問題なんだろうって思って検索したら、以下のようなページがすぐ見つかった。
もしかしたらここに書かれていないような背景も色々あるのかもしれないけど、この2つのページを読む限り、Automattic は控えめに言っても頭おかしい。
まとめ
WP という単語は WordPress と違って商標登録されていないにも関わらず、WP で始まるプラグイン名は WordPress.org のプラグインディレクトリに登録申請すると却下される。理由としては、「WP 〜」から「WordPress 〜」に後から変更されるのを防ぐため、という何ともおかしなもの。この措置は2021年に導入され、2025年現在も有効になっている。
Automattic 社(WordPress の主要コントリビューター)は WP Engine とも訴訟を抱えているそうだし、関わらない方が良さそう。
とはいえ、WordPress は全世界にあるウェブサイトの40%くらいで使われているそうなので、色々不満はありつつも、WordPress でサイトを作ったりプラグインを作ったりってのを今後もやっていくと思う。
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